
大学生の就職内定率は98.0%と高水準にある一方、
※本稿は、占部礼二 著『志望動機の教科書 就職・転職活動で後悔しないための職業選択ガイド』(インプレス NextPublishing)の内容を一部抜粋・編集したものです。
ここ数年の大学生の就職内定率をご存知でしょうか?毎年、5月の中旬から末ごろにかけて厚生労働省と文部科学省からその年の3月に卒業した大学生の就職内定率が発表されます。
2025年3月卒の就職内定率は――
98.0%
いかがでしょうか、イメージと合っていましたか?就活セミナーなどでこの話を学生の皆さんにするとだいたい驚かれます。「そんなに良いと思わなかった!」というのが率直な感想で、もっと低い数値を想像する学生が多いようです。
図1をご覧ください。今年が特段良かったのかと思うとそうではなく、前年は98.1%。
コロナ禍の影響を受けた年でさえ若干下がったとはいえ96.0%、95.8%と高い数値を計測しており、リーマンショックの影響を受けた年の91.0%よりは断然良いでしょう。ただ一つだけ注釈を入れると、これは「就職希望者」の内定率なので、大学院に進む、専門学校に行く、留学する、フリーターになる、など就職を希望しない人の人数は分母から省いています。
とはいえ、希望すればかなり高い確率で内定を得られる時代を迎えているといえます。どうしてここ数年、ここまで就職状況が良いのか、理由はおわかりでしょうか?
それは少子高齢化の影響で、人手不足の傾向が強まっているからです(もちろん業界によって差はありますが)。特に若い世代はこれからさらに数が減っていくため、企業から見ると「ますます貴重な存在」として注目されているのです。

「就職内定率が高いのなら、大学生の就活は問題ないのでは?」
「職業選択や志望動機を深く考えなくても内定が取れるのでは?」
──そんな声も聞こえてきそうです。確かにそれも一理あります。私自身、キャリアカウンセラーとして学生を支援したリーマンショックのころや、自分が就活をしていた氷河期と比べれば、苦戦する学生は明らかに減ったと感じます。
とはいえ、一人ひとりの就活に目を向ければ、今も昔も変わらず悩みや苦労は存在し、「楽ちんゲーム」になったとは到底いえません。
特にここ2~3年、就活を語るうえで避けて通れない問題が「早期化」と「長期化」です。
例えば、就職みらい研究所の「就職プロセス調査(2026年卒)」によると、2025年2月1日時点での内定取得率は「39.3%」に達していました。
この数字は大きな衝撃を与えました。現行の就活ルール、いわゆる「3・6就活」では、3月に広報活動の解禁・6月に面接活動の解禁と定められています。実際には、混乱を避けるためナビサイトがだいたい1か月前の2月ごろにオープンするケースが一般的です。
そのタイミングで、すでに学生の約4割が内定を得ていたわけなのです。過去のデータと比較すると、25卒は23.9%、24卒は19.9%、22卒はわずか9.9%。26卒の就活は、異例なほど早期化が進んでいることがわかります。
では、「早く動き出すことは本当に問題なのか?」。授業で学生にアンケートを取ると、意外にも肯定的にとらえる声が少なくありません。
「早く始めれば、早く内定をもらえて、残りの学生生活を楽しめる」という意見が多く見られました。確かに、早く動き出し、短期で就活を終えるのは一つの合理的な選択肢でしょう。
しかし実際の問題は、“早く始めても終わらない”ところにあります。
同じく就職みらい研究所の「就職白書2025」によると、実質的な就職活動期間は平均「8.45か月」。これは20卒の「6.38か月」と比べ、わずか5年で2か月も延びています。
本来、早期化が進み、しかも売り手市場で内定が取りやすい状況であれば、就活期間は短縮していくはずです。ところが現実には逆に長期化している。これは論理的に説明が難しい、不思議な状況だといえるでしょう。
では、なぜ就活は長期化しているのでしょうか。現時点では、就職活動研究の中でその明確な理由が特定されているわけではありません。
今後の調査や分析によって解明されていくはずですが、私自身の経験からいえば、職業選択の判断基準である「就活の軸」があいまいなまま就活に臨む学生が増えていることが大きな要因ではないかと感じています。
これまで就活準備は大学3年生の12月~1月ごろに始まるのが一般的でした。ところが早期化が進んだ結果、3年生の4月にはもう具体的に動き出す学生が増え、なかには2年生の終わりから準備を始めるケースすら見られます。
その分、本来ならじっくり自分の将来について考えるはずのモラトリアム期間が削られてしまっているのです。実際に就活が始まってしまえば、履歴書やエントリーシートの作成、面接対策といった作業に追われ、落ち着いて職業観を育む余裕はほとんどなくなります。
その結果、就活の軸や志望動機が十分に練られないまま選考に臨むことになるのです。
さらに厄介なのは、そのような状態でも「売り手市場」であるために内定が取れてしまうことです。成熟しきれないまま、周囲に流されてなんとなく就活を進めても、行動量さえ確保すれば内定は得られてしまう。すると後になって、「あれ?この選択で本当に良かったのだろうか」と迷い始めるのです。
実際、ここ1~2年で徐々に増えてきたと感じるのが、「半年ほど活動して複数の内定をもらったけれど、全部辞退して一からやり直します」という学生です。
就職内定率が高い時代だからこそ、そして就活が早期化・長期化している時代だからこそ、私は職業選択の基準となる「就活の軸」を丁寧に作り、志望動機をじっくり考えることを強く勧めたいと思います。
それがあれば、複数内定をもらってから再スタートを切る必要もなく、ここで終わりだと納得して決断でき、結果として就活の長期化も防げるのではないかと考えています。
更新:10月23日 00:05